医療系国家試験:微生物・免疫学分野の過去問を分析する

医師・歯科医師・薬剤師・臨床検査技師・看護師・歯科衛生士などの国家試験から生物・微生物・免疫学の問題を集めて受験生に役立ててほしいという趣旨です。

予想問題 111回医師国家試験(2017年)(微生物・免疫学分野)

2017年2月11日から13日は、医師国家試験が行われます。3日間の長丁場なのですね。

医師国家試験はまだ今年の分しかみたとこがないので、予想すらできないのですが、参考になるかもしれないので、今年の歯科医師国家試験にむけて作成した予想問題はこちらです。

kogumakita.hatenablog.jp

 この中から強いてとりあげるとすると、こちらになります。非常に基本的な問題です。しかし単なる暗記ではなく、すこしばかりの思考力が試されます。

免疫グロブリンに関する図を理解して、答える問題。

2016年の歯科衛生士国家試験に良い問題がありました。

歯科衛生士国家試験 2016年

(午前12)免疫グロブリンの図を示す。この免疫グロブリンの特徴はどれか。

 f:id:kogumakita:20160609154418p:plain

  1. 胎盤通過性がある。
  2. 抗原感作後に最も早く出現する。
  3. 免疫グロブリンの中で血清中に最も多い。
  4. アナフィラキシーショック型アレルギーの原因となる。

この問題は、二段階に読み解く必要があります。

まず図から、

・これは免疫グロブリンの五量体である。

  ↓

・五量体をつくるのはIgMである。

  ↓

IgMの機能として、選択肢の中で正しいのはどれか?

という順で思考する必要があります。答えは自ずと、「2」になりますね。

単純ですが、二段階に関連付けて答える必要がある、良問です。

単発の知識ではなく、考える力が問われます。

 

※これをもとにした予想問題を作ってみます。

図:(想像してください)Y字型の免疫グロブリンが2つつながった絵

この免疫グロブリンの特徴はどれか。

  1. 胎盤通過性がある。
  2. 抗原感作後に最も早く出現する。
  3. 免疫グロブリンの中で唾液中に最も多い。
  4. アナフィラキシーショック型アレルギーの原因となる。

これだとどうですか??

ヒント:二量体をつくる免疫グロブリンは??

 

次に、

臨床検査技師国家試験 2016年

80 次の模式図においてIgG濃度の変化を示すのはどれか。

f:id:kogumakita:20160622175847p:plain

 

1.① 2.② 3.③ 4.④ 5.⑤

ポイントは、IgGは胎盤通過性がある、ということです。言葉では覚えているけど、それをグラフで表現するとどうなりますか??

単純なことが問われているが、グラフを読み取って考える必要がある良問です。ちなみに、看護師国家試験で数年前に似た問題がでていました。それを焼き直した問題といえます。

 

 medu4 穂澄先生の総評に関しては、

kogumakita.hatenablog.jp

 

 

 

インフェクションコントロールチーム(ICT)に関する問題

インフェクションコントロールチーム(ICT)をご存じですか?

 

ここ数年で、各国家試験でICTに関する問題がよく出ているようです。

他の国家試験<歯科医師・?・>でも、いずれ出るかもしれませんね。

ちなみに、歯科医師の国家試験出題基準には、入っていると思います。<要確認>

 

概要の詳細は、こちらを御覧ください。

「感染防止対策等に関する平成28年度診療報酬改定に係わる資料」

↓少し古いですが、スライド形式で分かりやすいです。

 感染防止対策加算の説明資料(平成22年診療報酬改定時)

 

ICTに関する問題の例

 医師国家試験 2016年

110C11.院内感染対策チーム<ICT>で正しいのはどれか。

a 薬剤師はチームに入らない。

b 専従医師の配置が必須である。

c 感染患者の治療に強制介入する。

d 院内の感染症サーベイランスを行う。

e 感染症アウトブレイクに際して結成される。

 

<解説>

a 医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師などで構成されます。

b 「感染防止対策加算1」という最も加算の多い場合でも、専任の上記の職種のうち、「医師または看護師のうち1名は専従」が要件となっています。ですので、専従医師は必須ではない。(専従とは業務のうち該当業務が80%以上、専任とは50%以上従事することを意味するそうです。<要確認>)

c 強制介入するわけではなく、院内感染を防止したり、原因を探ったりします。

e 常設されています。

 よって、答えはdとなります。

 

薬剤師国家試験 2015年

問85 感染制御チームにおける薬剤師の役割として適切でないのはどれか。1選べ

1 病棟ラウンドへの参画

2 注射薬の無菌調製の推進

3 使用済針のリキャップの推進

4 耐性菌などの感染関連情報の収集・提供

5 TDM による抗菌薬の投与設計

<リキャップはあかんでしょう、ということで、それ以外は正しいことになります。>

 

感染予防,そしてコントロールのマニュアル-すべてのICTのために-

感染予防,そしてコントロールのマニュアル-すべてのICTのために-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予想問題 歯科医師国家試験 110回 2017年(微生物・免疫分野)

2017年の歯科医師国家試験は、2月4,5日に実施されます。

 

直前になりましたが、微生物・免疫学分野の予想問題を載せます。

過去の歯科医師国家試験、他の国家試験問題を参考にしています。

 

全範囲を網羅していませんが、出そうだな~と思うのは、以下のポイントです。

  • プリオンについて
  • 免疫グロブリンに関する図を理解して、答える問題
  • 消毒薬の希釈に必要な液量を問う問題
  • ディスク法による薬剤感受性の判定
  • 感染症の流行時期を問う問題
  • インフェクションコントロールチーム(ICT)について

 

プリオンについて

2016年には、各国家試験で、プリオンに関する出題が見られました。歯科でも出題されると予想します。

 

看護師国家試験(2016年)

31  感染性因子とその構成成分の組合せで正しいのはどれか。

1. 細菌 ―――― 核膜

2. 真菌 ―――― 細胞壁

3. プリオン ―――― 核酸

4. ウイルス ―――― 細胞膜

 (病原体の大まかな分類と、それぞれの生物学的な特徴が理解できているかを問う、重要な基本問題です。)

 

臨床検査技師国家試験 2016年

77 プリオンの構成要素はどれか。

1.RNA

2.蛋白質

3.リポ多糖体

4.プラスミド

5.バクテリオファージ

 

歯科衛生士国家試験 2016年

(午前13)プリオンの本体はどれか

1. DNA
2. RNA

3. 糖質
4. タンパク質

、、ということで、プリオンの正体はタンパク質であるということをおさえておけば、問題なく答えられるはずです

 

免疫グロブリンに関する図を理解して、答える問題。

2016年の歯科衛生士国家試験に良い問題がありました。

歯科衛生士国家試験 2016年

(午前12)免疫グロブリンの図を示す。この免疫グロブリンの特徴はどれか。

 f:id:kogumakita:20160609154418p:plain

  1. 胎盤通過性がある。
  2. 抗原感作後に最も早く出現する。
  3. 免疫グロブリンの中で血清中に最も多い。
  4. アナフィラキシーショック型アレルギーの原因となる。

この問題は、二段階に読み解く必要があります。

まず図から、

・これは免疫グロブリンの五量体である。

  ↓

・五量体をつくるのはIgMである。

  ↓

IgMの機能として、選択肢の中で正しいのはどれか?

という順で思考する必要があります。答えは自ずと、「2」になりますね。

単純ですが、二段階に関連付けて答える必要がある、良問です。

単発の知識ではなく、考える力が問われます。

 

※これをもとにした予想問題を作ってみます。

図:(想像してください)Y字型の免疫グロブリンが2つつながった絵

この免疫グロブリンの特徴はどれか。

  1. 胎盤通過性がある。
  2. 抗原感作後に最も早く出現する。
  3. 免疫グロブリンの中で唾液中に最も多い。
  4. アナフィラキシーショック型アレルギーの原因となる。

これだとどうですか??

ヒント:二量体をつくる免疫グロブリンは??

 

次に、

臨床検査技師国家試験 2016年

80 次の模式図においてIgG濃度の変化を示すのはどれか。

f:id:kogumakita:20160622175847p:plain

 

1.① 2.② 3.③ 4.④ 5.⑤

ポイントは、IgGは胎盤通過性がある、ということです。言葉では覚えているけど、それをグラフで表現するとどうなりますか??

単純なことが問われているが、グラフを読み取って考える必要がある良問です。ちなみに、看護師国家試験で数年前に似た問題がでていました。それを焼き直した問題といえます。

 

最後に、

消毒薬の希釈に必要な液量を問う問題

3倍希釈の麺つゆを薄めたりすることがあると思うので、考えれば分かりそうなものですが、なかなか最近の大学生に聞いても正解できない人が多いです。昨年歯科衛生士国家試験でも出題されたので、今年は歯科医師国家試験にでそうです。

昨年は、円周率を用いた小中学生でもできそうな計算問題が出題されましたが、正解率が悪かったようで、「問題としては適切だが、必修問題としては適切ではない」というような理由で、削除になりました。社会人として常識レベルの計算問題だと思ったのですが、、。ということで、希釈の計算問題がでるとすると、削除を避けるために一般問題としてでると、勝手に予想します。

 

歯科衛生士国家試験(2016年)

(午後97)床やスピットンに散った血液の消毒に6%次亜塩素酸ナトリウム液を希釈して0.5%液を600mL作ることにした。 

 6%次亜塩素酸ナトリウム液は何mL必要か。

  1. 25 mL
  2. 50 mL
  3. 75 mL
  4. 100 mL

看護師国家試験(2015年)

90. 5 %のクロルヘキシジングルコン酸塩を用いて 0.2 %希釈液 2,000 mL をつくる

のに必要な薬液量を求めよ。ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第 1 位を四捨五入すること。

解答:①②mL

<計算問題:2桁の数字をマークシートで答える問題です>

 

解説は、下の記事を参照してください。

kogumakita.hatenablog.jp

 

ディスク法による薬剤感受性の判定

歯科衛生士国家試験 2015年  

薬剤感受性試験の拡散法〈感受性ディスク法〉の写真を別に示す。矢印で示した黒丸は薬剤を含んだディスクである。

f:id:kogumakita:20170128231236p:plain

  最も効果のあるのはどれか。

a ①  b ②  c ③  d ④

 単純な問題ですが、ちゃんと答えられますか?衛生士国家試験問題が数年後に歯科医師国家試験に出題されることもありますので、要チェックです。

 この問題を少し変えたパターンとしては、細菌を塗った培地に抗菌薬と抗真菌薬のディスクを置いたときにどうなるかとか、真菌を塗った培地に抗菌薬と抗真菌薬のディスクを置くとどうなるか、など出題してみたいですね。

 

感染症の流行時期を問う問題

たしか2016年の医師国家試験の問題で、おもしろい問題がありました。詳しくはリンクをご覧ください。これも初めて見ると戸惑うかもしれませんが、考えると一般常識で答えられる問題です。

kogumakita.hatenablog.jp今年歯科医師国家試験で似た問題が出ないともかぎりません。

 

インフェクションコントロールチーム(ICT)について

2016年の医師国家試験に出題がありました。歯科医師国家試験の出題範囲にも含まれているので、知っておきたいところです。

医師国家試験 2016年

110C11.

院内感染対策チーム<ICT>で正しいのはどれか。

a 薬剤師はチームに入らない。

b 専従医師の配置が必須である。

c 感染患者の治療に強制介入する。

d 院内の感染症サーベイランスを行う。

e 感染症アウトブレイクに際して結成される。

kogumakita.hatenablog.jp

 

 

あと、標準予防策(スタンダードプレコーション)についても要チェック

 

 

 どうでしょうか?どれか1つでも実際に出題されて、受験生の役に立てればうれしいです。試験がんばってください!

 

 

 

 

消毒薬の希釈率を問う問題

 

 

消毒薬の希釈を間違えると、患者さんに害を与える可能性があります。訴訟につながったこともあると聞きます。(物騒ですが、病院で消毒薬による殺人が疑われた事件もありましたね。)

消毒薬を正しく希釈することは、とても重要です。計算は簡単です。しかし、大学生でもなかなかこの計算ができない人もいます。しっかり身につけてほしいです。

まず、実際に出題された例題です。

 

第25回 歯科衛生士国家試験(2016年)から

(午後97)床やスピットンに散った血液の消毒に6%次亜塩素酸ナトリウム液を希釈して0.5%液を600mL作ることにした。 

 6%次亜塩素酸ナトリウム液は何mL必要か。

  1. 25 mL
  2. 50 mL
  3. 75 mL
  4. 100 mL

 

kogumakita.hatenablog.jp

 

まず、6%を0.5%に希釈するには、何倍に希釈するか?

600mlに、その希釈率をかける(割る)と、答えがでます。

 6割る0.5は、12です。12倍希釈します。

600 ml の12分の1は、600 ml / 12 = 50 ml が答えです。

 

 続きまして、

 104回 看護師国家試験(2015年)から

90.

5 %のクロルヘキシジングルコン酸塩を用いて 0.2 %希釈液 2,000 mL をつくるのに必要な薬液量を求めよ。ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第 1 位を四捨五入すること。

解答:①②mL

<計算問題:2桁の数字をマークシートで答える問題です>

kogumakita.hatenablog.jp

 これも、考え方は上の問題と同じです。まず、5%の原液から0.2%への希釈率は、5 / 0.2 = 25倍です。つまり、最終的に必要な液量に対して、原液が25分の1入っていればよいことになります。(希釈するのに用いる水の量は、25分の24ということになります。)

 ですので、2000 ml / 25 = 80 ml が答えとなります。

 

 分からない人は、そうめんつゆの希釈を思い浮かべてください。3倍濃縮のつゆ原液を使って、300 mlのそうめんつゆを作るには、どうしますか? 

 3倍濃縮ということは、全量の3分の1が原液であればよいことになります。つまり、300 ml / 3 = 100 ml の原液を使います。

 水の量は、300 - 100 = 200 mlです。300ml に 3分の2(1ひく 3分の1)をかけても、200 ml と求められます。)

濃縮ということは、全量の3分の1が原液であればよいことになります。つまり、300 ml / 3 = 100 ml の原液を使います。

 水の量は、300 - 100 = 200 mlです。300ml に 3分の2(1ひく 3分の1)をかけても、200 ml と求められます。)

 

※ 2017年の看護師国家試験にも出ていました。看護師では定番のようですね。他の国家試験でも、これからこの手の問題は増える気がします。

 106回 看護師国家試験(2017年)から

6% A消毒液を用いて、医療器材の消毒用の0.02 % A消毒液を1,500 mL作るために必要な6% A消毒液の量を求めよ。ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。解答:①.②mL

 

※このページを多くの人に閲覧していただいているようですので、アンケートを作りました。よろしければ、お答えください。

アンケートの最後に、上の問題を含む練習問題(3問)がついています。

forms.gle

 

 ↓いろんな消毒薬の使い方が分かる本は、こちら

シチュエーションに応じた消毒薬の選び方・使い方

シチュエーションに応じた消毒薬の選び方・使い方

 

 

↓勉強用の演習本をつくりました。

kogumakita.hatenablog.jp

 ↓amazonへのリンク

 ↓Youtubeチャンネルをつくってみました

www.youtube.com

感染症の流行時期を問う問題

2016年の医師国家試験(110回)におもしろい問題がありました。

感染症の月別の<患者数>のグラフから、あてはまる感染症を選ぶ問題です。

聞かれている内容は基礎的ですが、グラフの読み取りと考える力が必要な良問と思います。医師や歯科医師のCBTにでてもおかしくなさそうな問題です。

 

医師国家試験

110B25 あるウイルス性疾患の我が国における月別発生数の傾向を示す。

この疾患はどれか。

f:id:kogumakita:20160713174225p:plain

a 水痘

B型肝炎

デング熱

d インフルエンザ

アデノウイルス感染症

 

どうでしょうか?グラフから、主に冬に流行していることがわかります。

あてはまる選択肢は、、、、自分で考えてください。

 

国立感染症研究所感染症発生動向調査週報 (IDWR)で、全国の感染症の報告数を毎週発表しています。ヒントとして、この週報の最新版から、いつかの感染症の報告数のグラフを載せます。横軸は1月から数えた週数ですので、横軸全体で1月から12月を表しています。

 

f:id:kogumakita:20160802164422p:plain

f:id:kogumakita:20160802164444p:plain

 

 インフルエンザは冬季に感染者が増えることがわかります。グラフからは、2009年のパンデミックも読み取れます。

 咽頭結膜熱(プール熱)は、アデノウイルスが原因で起こり、プール熱の名からも分かるように、通常夏季に流行します。

 水痘は、特にピークはないようですが、夏季には減少する事がわかります。

 デング熱は、蚊が媒介するので、日本での国内感染が起こるとすると、蚊が活動する夏季となるはずです。熱帯地方からの輸入感染症としては、日本国内でも年中患者が発生する可能性がありますが、いずれにしても、冬季に流行のピークが来ることはないでしょう。

 以上から、答えはわかりますね。

 

 この年の、国家試験問題へのリンクです。

kogumakita.hatenablog.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年 各国家試験の受験者数

このブログを始めた時には、特にどの国家試験受験生を対象にとは考えていなかったのですが、アクセスデータを見てみますと、臨床検査技師と、看護師の国家試験問題へのアクセスが多いようです。

 

そこで、各国家試験の受験生数が気をしらべてみました。

 

2016年 平成28年の受験者数


医師国家試験 第110回
出願者数 受験者数 合格者数 合格率
9,759人 9,434人 8,630人 91.5%


歯科医師国家試験 第109回
出願者数 受験者数 合格者数 合格率 

3,706人 3,103人 1,973人 63.6%

 

看護師国家試験 第105回
出願者数 受験者数 合格者数 合格率

62,633人 62,154人 55,585人 89.4%

 

薬剤師国家試験 第101回
出願者数 受験者数 合格者数 合格率
16,658名 14,949名 11,488名 76.8%

 

臨床検査技師国家試験 第62回
出願者数 受験者数 合格者数
4,628人 4,400人 3,363人 76.4%

 

歯科衛生士国家試験 第25回
受験者数 合格者数 合格率
7,233名 6,944名 96.0%

 

すべて、新卒と既卒を合わせた全体数です。これを見ると、看護師国家試験の受験生数は、飛び抜けていますね。それで訪問が多いのは合点がいきます。一方の臨床検査技師は、歯科医師に次いで少ない4600人程の受験生しかいないのに、多く訪問していただいているようです。情報を得られるところが限られているからなのでしょうか?せっかく来ていただいているので、力をいれていこうと思いました。徐々に、になりますが。

 

それにしても、歯科医師国家試験の合格率の低さは際立っていますね。歯学部の現状については、speeさんのブログが詳しいです。

 

ついでに、、もう少し詳しい数字をあげます。まず、公表されている数字から、新卒者と既卒者別の数字を出しています。

また、合格者/受験者の合格率に加えて、出願者数に対する合格率、出願者数に対する受験者の割合を出します。

*印は、公表されているデータを元に、計算して出した数値です。

医師国家試験 第110回
               出願者数     受験者数     合格者数     合格率        *合格/出願     *受験/出願
新卒者    8,943人        8,660人        8,165人        94.3%        91.3%        96.8%
*1)既卒      816人              774人          465人          60.1%        56.9%        94.8%

全体    9,759人            9,434人        8,630人        91.5%        88.4%

*1(全体-新卒者)で既卒の値を出しています。

歯科医師国家試験 第109回
              出願者数     受験者数     合格者数        合格率        *合格/出願    *受験/出願
新卒者    2,536人        1,969人        1,436人        72.9%        56.0%          77.6%(イ)
*1既卒     1,170人        1,134人         537人        47.3%        45.8%         97.2%

全体       3,706人        3,103人        1,973人        63.6%        53.2%(ア)83.7%

歯科医師国家試験では、見かけの合格率以上に、出願者数に対する合格率が低い事がわかります(ア)。出願しても受験しない人が多いということですが、これは、ほとんどが新卒者つまり最終学年の6年生であることが分かります(イ)。4人のうち1人は受験できないとは、結構な割合です。

歯学部、とくに私立大学の歯学部では、出願はさせても、最終的に留年させたり、卒業はさせてもその年の国家試験は受けられないようにする手法が取られているそうです。これは、国試合格の見込みの薄い学生に受験させないことで、見かけの新卒合格率(合格者/受験者)を上げる、数字のごまかしのためと考えられます。

しかし、各大学別で、出願者に対する合格率や、入学者数に対して6年間で国試に合格する割合などが公表されるようになってきており、見かけとは違った実態が見えてきています。詳しくは、別の記事でまとめたいと思います。


看護師国家試験 第105回     
                出願者数     受験者数     合格者数     合格率       *合格/出願  *受験/出願
新卒者     56,697人     56,414人     53,547人     94.9%        94.4%        99.5%
全体         62,633人     62,154人     55,585人     89.4%        88.7%

薬剤師国家試験 第101回
             出願者数         受験者数    合格者数    合格率        *合格/出願  *受験/出願
新卒者   9,625名           8,242名       7,108名    86.24%        73.8%        85.6%
全体   16,658名         14,949名    11,488名    76.85%        68.9%

臨床検査技師国家試験 第62回
              出願者数     受験者数     合格者数      合格率        *合格/出願 *受験/出願
新卒者    3,896人      3,727人        3,256人       87.4%        83.5%        95.6%        
全体        4,628人      4,400人        3,363人       76.4%        72.6%

 

とりあえず、以上です。

2016年 医師国家試験から基本的な問題のみ

2016年の医師国家試験(110回)から、生物・微生物・免疫に関する基本的な問題を抜き出します。他の国家試験受験生にも役立ちそうな問題と、少し考えれば分かるかも知れない問題を取り上げます。医師レベルの難しい問題は省いています。

 

<感想>

  • 基本的な問題もそこそこある。
  • やや突っ込んだ知識が必要な問題、何段階かよく考える必要がある良問も多い(過去問でよく出題されている問題無のかもしれないが、、)

 

<A問題>

4 抗癌化学療法により再活性化をきたす肝炎ウイルスはどれか。

A型 B型 C型 D型 E型

(医師国試以外では出なさそうですが、こんな問題もありました。持続感染し、抗癌剤治療や免疫低下時に注意が必要らしいです。C型では起こらないんですかね?)

 日本肝臓学会編『B型肝炎治療ガイドライン』に、以下の様な記述があります。

 血液悪性疾患に対する強力な化学療法中あるいは終了後に、HBs抗原陽性あるいはHBs抗原陰性例の一部にHBV再活性化によりB型肝炎が発症し、その中には劇症化する症例があり、注意が必要である。

 

17 我が国における食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因として頻度が高いのはどれか。2つ選べ

A 甲殻類 B 牛乳 C 小麦 D 大豆 E 卵

 

<B問題>

14. 自然免疫に関与するのはどれか。

NK細胞

形質細胞

ヘルパーT細胞

細胞傷害性T細胞

Bリンパ球<B細胞>

(ナチュラルキラー細胞と、細胞傷害性T細胞との違いを整理しよう。それ以外は、明らかに獲得免疫に関わりそうです。T細胞はTCR、B細胞は免疫グロブリンによって、特定の抗原と結合しますね。)

ナチュラル・キラー=「生まれつきの殺し屋」って感じですね。

ナチュラル・ボーン・キラーズ ディレクターズカット [Blu-ray]

ナチュラル・ボーン・キラーズ ディレクターズカット [Blu-ray]

 

 

 

110B25 あるウイルス性疾患の我が国における月別発生数の傾向を示す。

この疾患はどれか。

f:id:kogumakita:20160713174225p:plain

a 水痘

B型肝炎

デング熱

d インフルエンザ

アデノウイルス感染症

(これ、おもしろい問題ですね。一般常識で答えられそうですが、実際の試験で出題されると、グラフから情報を読み取って考えるところが、緊張感を生みそうです。)

詳しい解説は、 kogumakita.hatenablog.jp

 

 

<C問題>

11.院内感染対策チーム<ICT>で正しいのはどれか。

a 薬剤師はチームに入らない。

b 専従医師の配置が必須である。

c 感染患者の治療に強制介入する。

d 院内の感染症サーベイランスを行う。

e 感染症アウトブレイクに際して結成される。

(各国家試験で、ICTに関する問題がよく出ています。またいずれまとめようと思います。)

<a 薬剤師は入ります。b 「加算1」の場合でも、医師か看護師のうち1名の専従が要件。c 強制介入はしない。 e 常設されている

よって、答え:d>

詳しくは、

kogumakita.hatenablog.jp

 

 

<D問題>

3. 成人の病態と関連性が強いウイルスとの組合せで正しいのはどれか。

a 肺炎                               --アデノウイルス

b 上気道炎                        --ライノウイルス

c 喘息の増悪                     --サイトメガロウイルス

d 気管支拡張症の増悪        --RSウイルス

慢性閉塞性肺疾患の増悪  --パラインフルエンザウイルス

(どれかな?)

 

<E問題>

8 微小粒子状物質のうちPM 2.5について正しいのはどれか。

a 肺胞まで到達する。

b 炎症を起こさない。

c 2.5 ng以下の物質をいう。

d たばこの煙には含まれない。

e 大気中濃度の季節変動は小さい。

(テレビでもやってそうな、ほぼ一般常識問題) 

 

20 Ⅲ型アレルギーによる疾患はどれか。

a 蕁麻疹

b 水疱性類天疱瘡

アトピー性皮膚炎

d アレルギー性接触皮膚炎

e Schonlein-Henoch 紫斑病

 (アレルギーの分類)

 

31 感染症法に基づく入院勧告の対象はどれか。

a 麻疹

コレラ

c ポリオ

デング熱

日本脳炎

(一類、二類が入院勧告の対象というところから考えると、、)

 

 

 

110E35 外毒素がショックの原因となるのはどれか。2つ選べ

a 腸球菌

b 緑色連鎖球菌

c 表皮ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌

e A群β 溶血性連鎖球菌

(キーワードが思い浮かべば、、。以下『標準微生物学』から引用します。)

  • 毒素性ショック症候群 toxic shock syndrome(TSS)の原因毒素、毒素性ショック症候群毒素TSST-1スーパー抗原活性があり、T細胞を持続的に活性化し、大量のIL-1、IL-2およびTNFの産生を刺激することにより毒素性ショックを引き起こす。
  • 人喰いバクテリア”と言われる菌が起こす、レンサ球菌性毒素性ショック症候群Streptococcal toxic shock syndrome (STSS)。本菌が産生する発赤毒素がスーパー抗原としてTリンパ球に作用し、その結果大量のサイトカインが産生されることが一因と考えられている。高熱と筋肉痛、四肢の腫脹に引き続いて、壊死性筋膜炎や敗血症性ショックを起こし、急激に病態が悪化して致命率30~40%に達する。

よって、答えde。

 

37 ヒト免疫グロブリンとその特徴の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ

a IgA 胎盤通過性を有する。

b IgD 5量体を形成する。

c IgE Ⅲ型アレルギーに関与する。

d IgG 4つのサブクラスがある。

IgM 感染早期に産生される。

 (基本問題です。消去法で消せれば楽ですね。)

 

110E55 50歳の男性。献血を希望して献血センターを訪れた。アフリカの森林で3か月間、鳥類の生態の研究を行ってきたが、その間に体調を崩すことはなかった。帰国後も健康上の問題はなく、帰国して5か月たってから献血センターを訪れた。アフリカ以外の国に滞在経験はない。担当医は感染症の可能性があるために献血はできないと説明した。想定される感染症はどれか。

デング熱

マラリア

c Chagas 病

エボラ出血熱

e 変異型Creutzfeldt-Jakob病

アフリカと、潜伏期間が長いことがポイントなんでしょうか?

潜伏期間を調べると、

  • Chagas病は、南米に棲息する吸血昆虫サシガメが媒介する風土病性疾患。病原体は細胞内寄生原虫Trypanosoma cruzi。長い時には数十年の潜伏期間がある。

まとめると、Chagas病はアフリカとは関係ない、vCJDは特にアフリカでの感染が想定される感染症ではない。ただし、クロイツフェルト・ヤコブ病患者または疑いがある人は、「献血をご遠慮いただく」対象になる。

クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の方、またはそれと疑われる方|献血をご遠慮いただく場合|献血の流れについて|献血する|日本赤十字社

残りの3つの選択肢から、潜伏期間が5か月もあるものはないのですが、よく調べてみると、マラリアは十分な治療をしない場合、慢性化することがあるようです。そして、「献血をご遠慮いただく場合」に含まれています。アフリカの多くの国を含む「特B地域(マラリア感染リスクが「High」とされる地域)」に旅行した場合は1年、長期滞在した場合は3年間献血できないようです。ふむふむ。これで答えはわかりますね。

海外旅行者および海外で生活した方|献血をご遠慮いただく場合|献血の流れについて|献血する|日本赤十字社

答え:b

 

<G問題>

7 不活化ワクチンはどれか。

a MR ワクチン

b 水痘ワクチン

c BCG ワクチン

日本脳炎ワクチン

ロタウイルスワクチン

(abceは、生ワクチンですね。)

 

25 血液培養の検体採取方法で適切なのはどれか。

a 動脈採血を第一選択とする。

b 複数部位より採取する。

c 血液量はなるべく少量とする。

d ボトルに分注する前に針を交換する。

e 好気用ボトルに先に分注する。

(常在菌の混入による誤った結論を避けるためには、、、。)

 

31 適正使用のため感染対策部門が院内の使用を管理すべき抗菌薬はどれか。

セフェム系

ペニシリン

c カルバペネム系

マクロライド

e アミノグリコシド

 (どれかな?)

 

36 造血幹細胞について正しいのはどれか。2つ選べ

a 多分化能を有する。

b 自己複製能を有する。

c 次第に老化し枯渇する。

d 骨髄微小環境との相互関係はない。

e ほとんどが細胞周期の分裂期にある。

(一般的な、幹細胞の特徴を考えれば易しい問題です。)

 

<I問題>

2 微生物と生物学的分類の組合せで正しいのはどれか。

クラミジア                    --- 細胞内寄生菌

マイコプラズマ     --- 抗酸菌

トキソプラズマ     --- 真菌

d ニューモシスチス           --- 原虫

e クリプトコッカス           --- 嫌気性菌

 (微生物の分類と、そこに含まれる具体的な菌を整理できていれば、答えられます。)

 

28 ヒトパピローマウイルスが原因となるのはどれか。

a 軟性下疳

b 精巣上体炎

c 亀頭包皮炎

d 非淋菌性尿道炎

e 尖圭コンジローマ

(基本的な知識)

 

36 病変部皮膚の表皮基底膜部にIgGが沈着する疾患はどれか。2つ選べ

a 天疱瘡

b 疱疹状皮膚炎

c 水疱性類天疱瘡

d Hailey-Hailey病

e 後天性表皮水疱症

 (自己免疫疾患と、その分類)

 

110I45 58 歳の男性と55歳の女性の夫婦。本日午後11時に、下痢、嘔吐および腹痛を主訴に夫婦とも救急車で搬入された。夫は長期出張から午後8時に帰ったばかりであり、午後9時に夫婦揃って夕食をとった。妻によると献立は鍋物で、具材は冷凍にしておいた牡蠣、スーパーで本日午後に買った豆腐と野菜、春菊、ねぎ、もやしであった。その他に米飯と市販の漬物と昨日妻が採った山菜の天ぷらで夫婦で同じ物を食べたという。午後10時ころより夫婦とも腹痛が出現し、症状が増悪したため救急車を要請した。原因と考えられるのはどれか。

アニサキス

b 植物性自然毒

c ノロウィルス

カンピロバクター

腸管出血性大腸菌

 

・夫婦揃って発症ということは、一緒にとった食事が原因なのでしょう。そして、食事から救急搬送までは2時間と短時間です。また、鍋なので加熱はしていたと考えてよいでしょう。

 以下、『公衆衛生マニュアル2016』でそれぞれの病原体について調べると、

 キノコ類による植物性自然毒には、「胃腸炎型」「コレラ型」「神経型」があるそうですが、このうち「胃腸炎型」は、潜伏期が30分~2時間症状は「悪心・嘔吐、腹痛、下痢」ということで、問題の状況に当てはまりますね。

 

標準微生物学 第12版 (Standard textbook)

標準微生物学 第12版 (Standard textbook)

 

 

公衆衛生マニュアル 2016

公衆衛生マニュアル 2016

 

 

第110回 医師国家試験問題解説

第110回 医師国家試験問題解説

 

 

医師国家試験問題解説書 第110回

医師国家試験問題解説書 第110回