医療系国家試験:微生物・免疫学分野の過去問を分析する

医師・歯科医師・薬剤師・臨床検査技師・看護師・歯科衛生士などの国家試験から生物・微生物・免疫学の問題を集めて受験生に役立ててほしいという趣旨です。

2017年 薬剤師国家試験問題から

2017年の第102回 薬剤師国家試験問題から、微生物学・免疫学の基本的な問題を抜き出します。
※は、薬剤師以外の国家試験受験者にも重要と思われる問題である。
※※は、そのなかでも特に重要か、時事問題で出題可能性が高いと思われる問題である。

ちなみに、予想問題はこんな感じでした。

kogumakita.hatenablog.jp

 

 

では、実際の試験問題です。

<必修問題>
※※ 問14 真菌に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 ミトコンドリアをもたない。
2 エルゴステロールを含む細胞膜をもつ。
3 葉緑体をもつ。
4 細胞壁をもたない。
5 原核生物に分類される。
<ポイント>動物細胞の細胞膜にはリン脂質の他にコレステロールが埋まっており、細胞膜の柔軟性に関わるといわれています。真菌ではエルゴステロールがこの働きをします。抗真菌薬には、エルゴステロールの働きや合成を阻害する種類がありますので、その点でも重要です。次の年以降に、抗真菌薬の問題が出題される伏線の匂いをぷんぷん感じます!
<正解2>

 

問15 初回の免疫により最も早期に分泌される抗体のクラスはどれか。1つ選べ。
1 IgA
2 IgD
3 IgE
4 IgG
5 IgM
<ポイント>基本知識ですね。正解5

 

問18 ブタのレバーを生で食べることにより感染するリスクが最も高いウイルスはどれか。1つ選べ。
1 A型肝炎ウイルス
2 B型肝炎ウイルス
3 C型肝炎ウイルス
4 E型肝炎ウイルス
5 ノロウイルス
<ポイント>肝炎ウイルスのうち、B/C/D型は主に血液感染。AとE型は経口感染。A型は主に魚介類や水からの感染、E型はブタやシカに常在していると考えられ、日本ではこれらの動物との接触や生肉の接種でヒトに感染することがある。

 問19 母子感染する病原体のうち、新生児の心臓奇形と難聴のリスクを高めるのはどれか。1つ選べ。
1 ヒトT 細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)
2 サイトメガロウイルス
3 風しんウイルス
4 トキソプラズマ原虫
5 梅毒トレポネーマ
<ポイント>全て母子感染する可能性のある病原体であるが、問題文の症状は、先天性風疹症候群の症状である。HTLV-1は母乳感染する。梅毒・トキソプラズマ胎盤感染する可能性があり、先天梅毒・先天性トキソプラズマ症の原因となる。CMVは、経胎盤感染や母乳感染することがある。正解3。

 

問64 単純ヘルペスウイルス感染症に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 性器感染の多くは、HSV-1による。
2 免疫機能亢進時に発症する。
3 性器ヘルペスは、性交の翌日に好発する。
4 成人の口唇ヘルペスの多くは、ウイルスの再活性化により発症する。
5 確定診断は、細胞診により行う。
<ポイント>回帰発症はヘルペスウイルスの特徴である。正解:4

問65 ウイルス性肝炎に関する記述のうち、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 A型は多くが慢性化しやすい。
2 B型は経口感染である。
3 C型は血液感染である。
4 B型はRNA ウイルスが原因である。
5 C型はDNA ウイルスが原因である。
<ポイント>B/C/D型は血液感染である。

 問86 B型肝炎患者の血液で床が汚染された場合に適用される消毒薬はどれか。1つ選べ。
1 ポビドンヨード
2 次亜塩素酸ナトリウム
3 エタノール
4 クロルヘキシジングルコン酸塩
5 ベンザルコニウム塩化物
<ポイント>基本的な問題である。正解2。

 

<一般問題>
問116 真核細胞におけるmRNA からタンパク質への翻訳過程に関する記述について、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 翻訳過程は、開始、伸長及び終結の3段階の反応により完結する。
2 遺伝子の転写反応が完結する前に、翻訳開始反応が起こる。
3 翻訳開始反応は、mRNA の5’末端側から3’末端側の方向に進行する。
4 リボソームがもつぺプチジルトランスフェラーゼ活性により、ペプチド鎖伸長反応が起こる。
5 アミノアシルtRNA の生成には、ATP のエネルギーを利用してアミノ酸が活
性化される必要がある。
<ポイント>原核生物ではこういうことが起こるが、真核細胞では核内で転写が起こり、mRNAが細胞質へ出てから翻訳が起こるので、同時に起こることはない。正解:2

 

※※ 問118 免疫系における胸腺の役割に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 T細胞の前駆細胞は骨髄で作られた後、胸腺に移動して分化・成熟する。
2 胸腺において、T細胞抗原受容体の遺伝子の再構成が起こる。
3 胸腺は、成人において造血が行われる主要な器官である。
4 胸腺は、二次リンパ器官の一つである。
5 B細胞は主として胸腺で産生され、リンパ節で分化・成熟する。
<ポイント> 3. 成人で造血が主に起こるのは骨髄である。4. 胸腺は骨髄とともに一次リンパ器官である。5. B細胞は骨髄で賛成され、骨髄で分化・成熟する。正解12。

問120 細菌の毒素に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 腸管出血性大腸菌が産生するベロ毒素は、宿主細胞のタンパク質合成を阻害する。
2 コレラ毒素は、宿主の神経筋接合部でのアセチルコリンの遊離を抑制し、筋肉の麻痺を引き起こす。
3 ボツリヌス毒素は、宿主細胞内でアデニル酸シクラーゼを活性化し、サイク
リックAMP 濃度の上昇をもたらす。
4 グラム陰性菌の内毒素(エンドトキシン)は、外膜に存在するリポ多糖であ
る。
<14>

問164 抗ウイルス薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 バラシクロビルは、アシクロビルに変換された後、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼでリン酸化され、ウイルスDNA の複製を抑制する。
2 リトナビルは、インフルエンザウイルスのNS3-4A プロテアーゼを阻害し、
感染細胞からのウイルスの遊離を抑制する。
3 テラプレビルは、C型肝炎ウイルスのノイラミニダーゼを阻害し、ウイルス
RNA の合成を抑制する。
4 ザナミビルは、HIV のプロテアーゼ活性を阻害し、ウイルス構成タンパク質
の産生を抑制する。
5 ジドブジンは、感染細胞内でリン酸化され、HIV 逆転写酵素を競合的に阻害
する。
<15>

問186 インフルエンザの病態、診断及び治療に関する記述のうち、正しいのはどれ
か。2つ選べ。
1 インフルエンザウイルスは、A、B、Cの3つの型に分類され、いずれもヒトに感染して典型的なインフルエンザ症状を発症させる。
2 インフルエンザによる死亡率が最も高い年代は、15歳以下の子供である。
3 迅速診断には、鼻腔・咽頭拭い液を用いた酵素免疫測定法が用いられる。
4 インフルエンザを発症した小児の解熱には、アセトアミノフェンは推奨されない。
5 慢性呼吸器疾患などのハイリスク患者にはオセルタミビルの予防内服が認められている。
<35>

※※ 問233 院内感染を予防するために、陰圧個室に患者を収容するなど空気感染対策をとる必要がある感染症はどれか。2つ選べ。
1 水痘
2 結核
3 クロストリジウム・ディフィシル感染症
4 マイコプラズマ感染症
5 ノロウイルス感染症
<ポイント>空気感染する病原体として、水痘・麻疹・結核がある

昨年の予想的中!

 

問234-235 20歳女性。性感染症の薬物治療のため薬局に処方箋を持参した。
※※ 問234(実務)
薬剤師は服薬指導の際、厚生労働省の資料を基に作成したリーフレットを手渡した。下図はリーフレットの一部である。A は、陰部に潰瘍ができたり、リンパ節の腫れ、全身の発疹などの症状を呈する。A にあてはまる感染症はどれか。1つ選べ。

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1 淋菌感染症
2 性器クラミジア感染症
3 性器ヘルペスウイルス感染症
4 尖圭コンジローマ
5 梅毒
<ポイント>近年、若年者での梅毒感染が増加している。時事問題として、各国家試験で頻出である。正解5

 

 問235(衛生) 次の性感染症のうち、感染症発生動向調査において全数把握対象疾患として規定されているのはどれか。1つ選べ。
1 淋菌感染症
2 性器クラミジア感染症
3 性器ヘルペスウイルス感染症
4 尖圭コンジローマ
5 梅毒
<ポイント>全て5類感染症の性行為感染症であるが、全数把握の対象は梅毒である。他4つは、5類感染症の定点把握の対象である。

問236-237 ある病院において、予防接種の頻度が上がり、患者からの薬剤部への問い合わせ件数も増加したため、ワクチンの接種法及び接種時期について確認作業を行った。

問236(実務)
予防接種に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 複数のワクチンを同時に接種する場合には、上腕と大腿など穿刺部位を離してから注射する。
2 不活化ワクチンの接種後に別の疾患に対するワクチンを接種する場合は、生ワクチンの接種後に比べ接種間隔を長くあける必要がある。
3 生ワクチンには有効期間が定められているが、不活化ワクチンには定められていない。
4 生ワクチン、不活化ワクチンのいずれの場合も、接種後に副反応が生じることがあるので30分程度様子を見ることが必要である。
<正解14>

 問237(衛生) 予防接種法に基づく定期の予防接種に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 高齢者の肺炎球菌感染症予防接種法におけるB類疾病に含まれ、65歳以上になると、肺炎球菌ワクチンは毎年度1回ずつ接種することができる。
2 ポリオ(急性灰白髄炎)のワクチンは、ジフテリア、百日咳、破傷風のワクチンとともに、4種混合ワクチンとして接種される。
3 麻しん・風しん混合ワクチンは、免疫効果が強い生ワクチンなので、生後
12~24ヶ月の間に1回のみ接種される。
4 水痘は予防接種法におけるA類疾病に分類され、そのワクチンとしては弱毒生ワクチンが用いられる。
5 インフルエンザ菌b型(Hib)に対するワクチンは、インフルエンザウイルス
に対しても効果を示す。
<ポイント>5.インフルエンザ菌とインフルエンザウイルスは別物である。正解24。

選択肢2について、予想的中でした!

 

問245(衛生)
感染性廃棄物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 薬剤師は、感染性廃棄物に係る特別管理産業廃棄物管理責任者になることができる。
2 感染性廃棄物は滅菌処理した後も、全て指定された容器に分別しなければならない。
3 感染性産業廃棄物の処理は、指定を受けた契約業者に委託するためマニフェスト制度の対象外である。
4 感染性廃棄物を入れる容器にはバイオハザードマークを付けるか、感染性廃棄物であることを明記する必要がある。
<正解14>

 問301(病態・薬物治療)
HBV が原因のB型肝炎に関する記述として、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 HB ワクチンは感染予防には有効ではない。
2 性行為による感染はない。
3 IgMHBc抗体は肝炎の後期に現れる。
4 初感染で自然治癒するのは半数以下である。
5 HBs抗体は肝炎の病態が終息した後に上昇する。
<5>