2017年 臨床検査技師国家試験のうち、基本的な問題
2017年の第63回 臨床検査技師国家試験から、微生物・免疫学に関連する基本的な問題をとりあげます。
※※いくつか、考えさせる良い問題があったように思います。その問題は赤星2つつけました。
※考えさせるというほどではないけど、基本的な良問は赤星1つです。
※午前7
皮膚に付着していた虫体(体長2.5 mm)の写真(別冊No. 2)を別に示す。
この虫が引き起こすのはどれか。
1.疥癬
2.ペスト
3.発疹チフス
4.ツツガムシ病
<ポイント>
近年話題の5.SFTSを答えさせたい問題に見えるが、1も正解となった。
5.のSFTSはマダニに媒介されるウイルス感染症で、病原体はSFTSウイルスです。
2010年代に中国で初めて報告された新興感染症と言えます。
疥癬は、ヒゼンダニが皮膚に寄生して起こる皮膚の病気で、ダニそのものが病原体である感染症です。
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa6/index.html
SFTSを媒介するフタトゲチマダニの体長は、成虫で約3mm、血を吸った状態で約10mmです。
一方、疥癬の原因となるヒゼンダニの体長は、成虫で約0.4mmだそうです。
問題文の、「体長2.5mm」という情報からも、マダニであると考えられるのですが、体長(と写真)の情報だけから1.の疥癬を排除するのは適切ではないということなのか、1と5が正解となったのだと思われます。
<1,5>
※午前68
ウイルスで正しいのはどれか。
1.核膜がある。
2.単細胞である。
3.有糸分裂する。
4.プラスミドを有する。
5.偏性細胞内寄生体である。
<ポイント>
ウイルスの性質に関する基本問題です。
一言でいうと、ウイルスは生物ではなく、1~4は当てはまりません。
(すべての)ウイルスは偏性細胞内寄生体ですので、5が正解です。
偏性細胞内寄生体には他に、クラミジアやリケッチアという特殊な細菌があります。
※午前72
作用機序と抗菌薬の組合せで正しいのはどれか。
1.細胞質膜障害― アミノグリコシド系
2.核酸合成阻害― グリコペプチド系
3.蛋白合成阻害― テトラサイクリン系
<ポイント>
抗菌薬の作用機序に関する基本問題。
テトラサイクリン系は、細菌の30Sリボソームに結合して、タンパク質合成を阻害します。
その他は、自分で調べてみてください。
1.梅毒
2.オウム病
3.腸チフス
4.感染性心内膜炎
5.ニューモシスチス肺炎
<ポイント>
真菌感染症で、AIDSの指標疾患でもあります。
<5>
午前77
プリオン蛋白が病原因子となる疾患はどれか。2つ選べ。
1.急性灰白髄炎
2.ウシ海綿状脳症
3.Burkitt リンパ腫
4.亜急性硬化性全脳炎
5.Creutzfeldt-Jakob病
<ポイント>
プリオン病には、2.のBSE(狂牛病)や、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病やクールー、ヒツジのスクレイピーなどがあります。
午前78
Aspergillus fumigatusの模式図(別冊No. 16)を別に示す。矢印で示すのはどれか。
1.頂囊
2.分生子
3.メツラ
4.分生子柄
5.フィアライド
<ポイント>
カトリックの聖水をかける儀式に使われる容器を、アスペルギルムと呼ぶそうです。
その形に似ていることから、アスペルギルスという真菌の名前がついたそうです。
アスパラガスも同じ語源という話もあります。
アスペルギルスの形は、特徴的なので、写真を見ればわかります。
ただ、この「矢印で示すのはどれか?」という問題は、ちょっと細かい知識ですね。
<1>
※午前79
免疫寛容の破綻が発症原因となる疾患はどれか。
1.花粉症
2.関節リウマチ
3.接触性皮膚炎
4.移植片対宿主病
5.血液型不適合妊娠
<ポイント>
自己免疫疾患のひとつです。自己に対する免疫応答が起こってしまいます。
他の選択肢はそれぞれ、外来(非自己)の抗原に対する反応であり、免疫寛容の破綻が原因ではありません。
(免疫寛容とは、自己成分に対しては免疫反応が起きない現象・仕組みのことです。)
<2>
※※午前80
免疫応答で正しいのはどれか。
1.一次反応でIgMはIgGに遅れて出現する。
2.二次反応でIgMは出現しない。
3.二次反応で記憶B細胞が生じる。
4.二次反応は初回と異なる抗原を2回目に投与したとき起きる。
5.一次反応より二次反応の方が多くの抗体が産生される。
<ポイント>
一次反応と二次反応の違いをよく理解できていれば、簡単です。正解は5。
1.一次反応ではIgMが先に出現するのが特徴です。
2.二次反応でも、IgGよりは少なくなりますが、IgMも産生されます。
3.一次反応で記憶B細胞が産生されるので、二次反応で迅速に反応できます。
4.経験済みの抗原に再びさらされることで、二次反応がおきます(記憶細胞がつくられているから)。
初めて経験する異なる抗原が入ってくると、それはまた一次反応が起こります。
午前81
補体で正しいのはどれか。
1.血中濃度はC4が最も高値である。
2.レクチン経路は獲得免疫に関与する。
3.C3bはアナフィラトキシンとして作用する。
4.B因子は古典的経路と副経路の両方に関与する。
5.C1 複合体形成にカルシウムイオンを必要とする。
<ポイント>
これはやや細かい理解を問われていますが、補体は重要です。
<5>
午前82 生ワクチンはどれか。
1.麻疹
2.A型肝炎
3.B型肝炎
4.肺炎球菌
5.破傷風トキソイド
<ポイント>
基礎的な知識。
生ワクチンが使用される病原体は限られているので、覚えてしまえばよい。
麻疹・風疹・水痘・ロタ・ムンプス・BCGなど。
<1>
午前84
Ⅲ型アレルギー性疾患はどれか。
1.膜性腎症
2.Basedow病
3.アトピー性皮膚炎
4.自己免疫性溶血性貧血
5.特発性血小板減少性紫斑病<ITP>
<1>
午前86
ABO式血液型判定で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ウラ検査は血球濃度10%で行う。
2.オモテ検査とウラ検査を両方行う。
3.カラム法では部分凝集が判定できない。
4.部分凝集がみられるときは亜型の可能性がある。
5.スライド法では判定用抗体滴下後5秒以内に判定する。
<24>
※午前100
エチレンオキサイドガス滅菌の特徴はどれか。
1.薬液の滅菌ができる。
2.紙製の包材は使用できない。
3.160 ℃で60 分間の加熱をする。
4.絶対気圧2kg/cm2以上に加圧する。
5.滅菌後に充分なエアレーションが必要である。
<ポイント>
人体にも有害な有毒ガスなので、使用後のガスの吸着・屋外への排出が必要である。
<5>
午後
午後9
PCR法で使用しないのはどれか。
1.制限酵素
2.プライマー
3.マグネシウムイオン
4.耐熱性 DNAポリメラーゼ
5.デオキシリボヌクレオシド三リン酸
<ポイント>お決まりの問題
<1>
10 体細胞の有糸分裂が起こるのはどれか。
1.G0 期
2.G1 期
3.G2 期
4.M 期
5.S 期
<ポイント>有糸分裂Mitosisが起こるのがM期
※午後29
ATP産生に関与しないのはどれか。
1.解糖系
2.β 酸化
3.尿素回路
4.電子伝達系
5.クエン酸回路
<3>
※午後37
蛋白質の生合成で誤っているのはどれか。
1.転写は核内で行われる。
2.翻訳はリボソームで行われる。
3.プロモーター領域に転写因子が結合する。
4.アミノアシル-tRNAの生合成にはATPが必要である。
5.転写にはRNA依存性DNAポリメラーゼが必要である。
<ポイント>
5.転写はDNAの情報をRNAに写し取ることであるが、ここに必要なのはDNA依存性RNAポリメラーゼである。
(DNAを鋳型として、RNA鎖を合成する)
<5>
※午後67
リンパ球で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.B 細胞は骨髄で産生される。
2.NK 細胞は免疫グロブリンを産生する。
3.成熟T細胞はトロンボポエチンを産生する。
4.成熟B 細胞は細胞表面に補体レセプターを持つ。
5.健常成人の末梢血ではT細胞よりもB 細胞が多い。
<14>
※※午後68
グラム陽性菌とグラム陰性菌に共通する細胞壁の構成成分はどれか。
1.タイコ酸
2.リン脂質
3.リポ多糖体
4.ペプチドグリカン
5.(1→3)-β-D-グルカン
<ポイント>
基本的な問題であるが、暗記というよりは、ちゃんと理解していて、その場で考えられる力がいる。
タイコ酸はグラム陽性菌の細胞壁に、リポ多糖は陰性菌の外膜に含まれる。
リン脂質は細胞膜の成分であり、細胞壁成分ではない。
βグルカンは、真菌の細胞壁成分。
午後69
DNAウイルスはどれか。
1.風疹ウイルス
2.デングウイルス
3.エボラウイルス
4.A型肝炎ウイルス
5.B 型肝炎ウイルス
知っているかどうかの問題。
※午後71
プラスミドで正しいのはどれか。2つ選べ。
1.RNAである。
2.一本鎖である。
3.細胞質内に存在する。
4.ウイルスの構成成分である。
5.抗菌薬耐性の情報を伝達する。
<ポイント>
プラスミドとはどういうものかを理解していればよい。
普通は二本鎖のDNAである。ウイルスの構成成分ではない。
<15>
午後73
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律<感染症法>で三類感染
症はどれか。
1.結核
2.ペスト
3.ジフテリア
<5>
77 ワクチン接種で予防可能な髄膜炎の原因菌はどれか。2つ選べ。
1.Escherichia coli
2.Haemophilus influenzae
3.Neisseria meningitidis
4.Streptococcus agalactiae
5.Streptococcus pneumonia
三種類の組合せが正解となったようである。
<25,23,35>
※※午後79
細胞傷害性T細胞のT細胞レセプターで正しいのはどれか。
1.遺伝子の再構成は起きない。
2.MHC クラスⅡ拘束性を持つ。
3.CD4 分子と共同して機能する。
4.抗原提示細胞からの刺激を受ける。
5.α鎖、β 鎖、γ 鎖およびδ 鎖からなる四量体である。
<ポイント>
1. T細胞レセプター(TCR)とB細胞レセプター(BCR)にはVDJ組み換えという遺伝子再構成が起きる。
2.3. 細胞傷害性T細胞(CTL)はCD8陽性T細胞であり、CB8はMHCクラスⅠと結合することで、提示された抗原をTCRが認識するのを助ける。
5. 二量体のはず。
※午後80
免疫グロブリンで正しいのはどれか。
1.IgAは胎盤通過性がある。
2.IgD はT細胞に存在する。
3.IgE は肥満細胞に結合する。
4.IgG は補体活性化能がない。
5.IgM は分泌成分と結合している。
<3>
※午後82 B型肝炎ウイルスワクチンの効果を判定する検査はどれか。
1.HBc 抗体
2.HBe 抗原
3.HBe 抗体
4.HBs抗原
5.HBs抗体
<ポイント>
HBVの表面(surface)に存在する抗原であるHBsがワクチンとして用いられる。
HBsに対する抗体が産生されているかによって、ワクチン効果を判定する。
<5>
※午後84
ヒト免疫不全ウイルス<HIV>の標的分子はどれか。
1.CD1
2.CD4
3.CD8
4.CD20
5.CD34
<ポイント>
ウイルス表面のgp120というタンパク質によって、CD4陽性細胞(ヘルパーT細胞など)のCD4を認識して感染する。
<2>
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