医療系国家試験:微生物・免疫学分野の過去問を分析する

医師・歯科医師・薬剤師・臨床検査技師・看護師・歯科衛生士などの国家試験から生物・微生物・免疫学の問題を集めて受験生に役立ててほしいという趣旨です。

予想問題 2018年 歯科医師国家試験 111回 (微生物・免疫分野)

2018年1月ももうすぐ終わりです。国家試験の季節がやってきました。

まずは、2月4日、5日に111回の歯科医師国家試験があります。

今年から出題形式が少し変更になるということです。

 

昨年、出題予想をしました。結果としては、予想はまったく当たりませんでしたが、引き続き出題される可能性はあるので、参考にしてください。

特に、下の点は今年出てもおかしくないかと思います。

 

  • プリオンについて
  • 免疫グロブリンに関する図を理解して、答える問題
  • 消毒薬の希釈に必要な液量を問う問題
  • ディスク法による薬剤感受性の判定

kogumakita.hatenablog.jp 

実際の2017年、110回の試験問題はこちらです。

kogumakita.hatenablog.jp

昨年の予想に追加して、次の点に注目しています。内容の理解と共に、日本人がノーベル賞を受賞していますので、人物を問う問題としても出題される可能性があります。

 また、その他、T細胞とB細胞の遺伝子再構成が出題されたことと関連して、以下のような免疫学の基本的な問題が出題されると予想しました。

  

このページでとりあげる問題を、クイズ形式で回答できるページを作りました。時間のある人は、まず力試しに問いてみてください。それから下の解説を読むと、より頭に定着するのではないでしょうか?

やらなくていいよという場合は、そのまま下へ進んでください。

forms.gle

 

では、ここからが予想問題と解説です。

目次

1.昨年出題された問題から派生した予想問題など

細菌の細胞壁合成を阻害する抗菌薬はどれか?2つえらべ。

a. アゾール系
b. ポリエン系
c. β-ラクタム系
d. グリコペプチド系
e. テトラサイクリン系

<ポイント>

110回では、細菌の細胞壁を分解する酵素が問われ、リゾチームを答える問題が出題されました。そこで今年は、細菌細胞壁合成阻害薬が問われると予想します。

a. b. は、抗真菌薬ですね。抗菌薬は、作用機序ごとの分類を頭に入れておくとよいでしょう。抗菌薬のうち、テトラサイクリン系は、リボソームに結合してタンパク質合成を阻害します。β-ラクタム系とグリコペプチド系(例:バンコマイシン)は、ペプチドグリカンの合成を阻害します。

 

 アシクロピルが奏効するのはどれか。1つ選べ。

a. 麻疹
b. C型肝炎
c. 帯状疱疹
d. 感染性胃腸炎
e. 成人T細胞白血病

<ポイント>110回の問題(110A71)から、正解の選択肢を変更した問題です。ヘルペスウイルス科を整理しましょう。ここ数年で、回帰発症が問われたり、突発性発疹が出題されています。他には、サイトメガロウイルスEBウイルスを見ておきましょう。

 

2.T細胞とB細胞の遺伝子再構成に関して

VDJ組換えが起こる遺伝子はどれか?2つえらべ。

a. T細胞受容体

b. Toll様受容体

c. CD4受容体

d. MHCクラスⅠ

e. 免疫グロブリン

 <ポイント>110回で、遺伝子再構成が起こる細胞として、T細胞B細胞を答える問題が出題されました(110C99)。これらの細胞では、どんな抗原が来ても対応できるだけの構造の多様性をもった受容体を持っています。この多様性を生む仕組みがVDJ組み換えによる遺伝子再構成なわけですが、ではそれぞれの細胞で再構成が起こる遺伝子はどれか?という問題を予想します。

答えは、T細胞受容体(TCR)と免疫グロブリン(B細胞受容体)の遺伝子です。

 

免疫グロブリンの遺伝子再構成を証明したのはだれか?

a. 審良静男
b. 大村智
c. 北里柴三郎
d. 利根川進
e. 山中伸弥

<ポイント>では、免疫グロブリンの遺伝子再構成という大発見をしたは誰か、という問題です。1987年にノーベル賞を受賞しています。

 

3.寄生虫感染症に関する問題

寄生虫感染症はどれか。1つ選べ。

a. 梅毒
b. アニサキス
c. インフルエンザ
d. トキソプラズマ
e. 肺アスペルギルス症
f. クロイツフェルト・ヤコブ病

 <ポイント>昨年は、原虫感染症を問う問題が出題されましたので、単純に、次は寄生虫感染症を選ぶ問題が出ると予想します。それぞれの選択肢の原因微生物の種類(細菌・ウイルス・真菌など)はイメージ出来るようがよいでしょう。

ここでは、アニサキス症を正解とします。トキソプラズマは原虫で、「寄生虫」という言葉は広い意味では原虫も含むかもしれませんが、この問題では、狭い意味の寄生虫を聞いています。

「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」によりノーベル賞を受賞したのはだれか。

a. 大村智
b. 田中耕一
c. 利根川進
d. 山中伸也
e. 北里柴三郎

 <ポイント>2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞されましたので、時事問題としても出題の可能性ありと予想します。

4.その他

Red complexに含まれる細菌と同じ属の細菌によっておこる感染症は?

a. 梅毒
b. 風疹
c. 猩紅熱
d. ツツガムシ病
e. 口腔カンジダ

<ポイント>まず、Red Complexと呼ばれる、歯周病と関連の深い細菌を理解しているか(最近の研究では、必ずしも正しいかどうかは疑問視される部分もありますが、とりあえず国家試験では覚えておく必要がある)。そして、3つあるその細菌と同じ属名をもつ細菌が原因の感染症はどれか?という問題です。正解は、Treponema pallidumが病原体である感染症なのですが、どれでしょうか?近年、日本でも感染者数が増加しているということで、たびたびニュースになっています。時事問題として出題の可能性があると予想します。

 

 病原体に共通する構造を認識する、「パターン認識レセプター」に含まれるのはどれか?

a. Fc受容体
b. CD4受容体
c. Toll様受容体
d. MHCクラスⅠ
e. MHCクラスⅡ

 <ポイント>T細胞とB細胞での遺伝子再構成といった免疫学の基礎内容が出題されたということから、同様な基礎的問題としての出題を予想します。

 パターン認識レセプター(PRRs; Pattern Recognition Reseptors)は、例えばリポ多糖や鞭毛など、病原体特有の共通した構造を認識する受容体である。なかでも、Toll様受容体(Toll-like receptor; TLR)が代表的である。
 例えば、TLR4が、グラム陰性菌を認識するといった具合である。他にも、細菌の鞭毛やペプチドグリカンや、真菌の細胞壁、ウイルスの二本鎖RNAなど、病原体にしか存在しない構造を認識して、活性化する。

樹状細胞がCD4陽性T細胞に抗原提示するために、貪食した外来ペプチドをのせる分子は?

a. Fc受容体
b. CD4受容体
c. CD8受容体
d. Toll様受容体
e. MHCクラスⅡ

<ポイント>同様に、免疫の基礎的な内容として、樹状細胞による抗原提示を予想します。ヘルパーT細胞などのCD4陽性T細胞は、MHCクラスⅡを発現する細胞から抗原提示を受けます。抗原を載せているのがMHCクラスⅡであり、これがCD4と結合するので、この組合せは決まっています。抗原提示する相手は、上ででてきた、T細胞受容体(TCRです。この遺伝子が再構成をうけることで10の何乗にもなる多様な抗原を認識できるわけです。

 ウイルスに感染した細胞などがCD8陽性T細胞(のTCR)に抗原提示する場合は、MHCクラスⅠ上に抗原を載せます。MHCクラスⅠとCD8が結合するという組合せも決まっているので、抗原提示する相手はCD8陽性T細胞ということになります。

 

以上、今年の予想はいかがだったでしょうか?やや免疫にかたよっていますが、これは、昨年、遺伝子再構成の問題が出題されたところから、ピンと来るものがありました。一問でも、近い問題が出題されるとよいのですが・・。

ドンピシャにあたらなくても、ここで予想した内容を理解していることは、役に立つと思います。

昨年の医師国家試験問題(111回)から

他に、昨年の医師国家試験問題からいくつか参考にしてほしい問題があるので、あげておきます。

医師111D10 感染症法に基づき、すべての医師がすべての患者の発生について届出をおこなうのはどれか。

a. 水痘
b. 梅毒
c. 突発性発疹
d. 伝染性紅斑
e .性器ヘルペス

医師111D14 HTLV-1について正しいのはどれか。2つ選べ。

a. レトロウイルスである。
b. CD8陽性T細胞に感染する
c. 感染経路は母乳がほとんどである。
d. 感染者は日本では東日本地域が多い
e. 感染から成人T細胞白血病の発症までの期間は5年以内である。

 

医師111I4 誤嚥性肺炎の原因微生物として頻度が高いのはどれか。

a. 腸球菌属
b. 放線菌属
c. Candida属
d. 連鎖球菌属
e. Pseudomonas属
 

医師111I24 嘔吐と下痢を伴うウイルス性胃腸炎が強く疑われる児の汚物を処理する際に用いられる消毒薬として適切なのはどれか。

a. エタノール
b. ポピドンヨード
c. 塩化ベンザルコニウム
d. 次亜塩素酸ナトリウム
e. グルコン酸クロルヘキシジン

 

解説は、↓下のページに載せています。

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ここ2年の臨床検査技師国家試験問題から

臨床検査技師国家試験にも、良い問題がちらほらありますので、見ておくと良いでしょう。

臨検 62午前73 結核と同じ感染経路別予防策が必要な疾患はどれか。(2016年)

1.水痘
2.梅毒
3.風疹
4.コレラ
5.デング熱

臨検 62午後68 ウイルスとクラミジアに共通する特徴はどれか。(2016年)

1.二分裂で増殖する。
2.リボソームを有する。
3.抗生物質に感受性がある。
4.光学顕微鏡で観察できる。
5.増殖には生きた細胞が必要である。

↓解説は、こちら

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 臨検63午後68 グラム陽性菌グラム陰性菌に共通する細胞壁の構成成分はどれか。(2017年)

1.タイコ酸
2.リン脂質
3.リポ多糖体
4.ペプチドグリカン
5.(1→3)-β-D-グルカン

臨検63午後79 細胞傷害性T細胞のT細胞レセプターで正しいのはどれか。(2017年)

1.遺伝子の再構成は起きない。
2.MHC クラスⅡ拘束性を持つ。
3.CD4 分子と共同して機能する。
4.抗原提示細胞からの刺激を受ける。
5.α鎖、β 鎖、γ 鎖およびδ 鎖からなる四量体である。

↓解説は、こちら

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2017年 薬剤師国家試験から

問14 真菌に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

1 ミトコンドリアをもたない。
2 エルゴステロールを含む細胞膜をもつ。
3 葉緑体をもつ。
4 細胞壁をもたない。
5 原核生物に分類される。

 

問118 免疫系における胸腺の役割に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 T細胞の前駆細胞は骨髄で作られた後、胸腺に移動して分化・成熟する。
2 胸腺において、T細胞抗原受容体の遺伝子の再構成が起こる。
3 胸腺は、成人において造血が行われる主要な器官である。
4 胸腺は、二次リンパ器官の一つである。
5 B細胞は主として胸腺で産生され、リンパ節で分化・成熟する。

 

問233 院内感染を予防するために、陰圧個室に患者を収容するなど空気感染対策をとる必要がある感染症はどれか。2つ選べ。

1 水痘
2 結核
3 クロストリジウム・ディフィシル感染症
4 マイコプラズマ感染症
5 ノロウイルス感染症

 

問234-235 20歳女性。性感染症の薬物治療のため薬局に処方箋を持参した。

問234(実務)
薬剤師は服薬指導の際、厚生労働省の資料を基に作成したリーフレットを手渡した。下図はリーフレットの一部である。A は、陰部に潰瘍ができたり、リンパ節の腫れ、全身の発疹などの症状を呈する。A にあてはまる感染症はどれか。1つ選べ。

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1 淋菌感染症
2 性器クラミジア感染症
3 性器ヘルペスウイルス感染症
4 尖圭コンジローマ
5 梅毒
 

問235(衛生) 次の性感染症のうち、感染症発生動向調査において全数把握対象疾患として規定されているのはどれか。1つ選べ。
1 淋菌感染症
2 性器クラミジア感染症
3 性器ヘルペスウイルス感染症
4 尖圭コンジローマ
5 梅毒

 

↓解説は、こちらで御覧ください。

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歯科医師国家試験問題解説書―解説書/写真集/問題集〈第110回(2018)〉

歯科医師国家試験問題解説書―解説書/写真集/問題集〈第110回(2018)〉