医療系国家試験:微生物・免疫学分野の過去問を分析する

医師・歯科医師・薬剤師・臨床検査技師・看護師・歯科衛生士などの国家試験から生物・微生物・免疫学の問題を集めて受験生に役立ててほしいという趣旨です。

2016年 薬剤師国家試験(必須問題)から

 ※2017年の予想問題はこちら

kogumakita.hatenablog.jp

 

2016年の薬剤師国家試験(101回)から、生物学・微生物関係の問題を集めました。

薬剤師の国家試験は、必須問題と一般問題にわかれています。問題数が多いので、今回は必須問題を取り上げます。

 

<ポイント(ほぼ感想)>

  • 必須問題に出題される問題は、他の国家試験で出題されてもおかしくないような、とても基本的な問題という印象です。
  • 薬剤師の試験ということで、消毒薬の問題の割合が高い気がします。
  • 問90の、シチュエーションに応じた消毒薬の選択をする問題は、薬剤師ならではという感じで、面白いですね。単純な知識だけでなく、考える力が必要な問題です。

 

問13 翻訳過程において、リボソームアミノ酸を運ぶ役割を担うRNA はどれか。

1つ選べ。

1 rRNA(リボソームRNA

2 tRNA(トランスファーRNA

3 mRNA(メッセンジャーRNA

4 miRNA(マイクロRNA

5 siRNA(低分子干渉RNA

 (とても基本的な生物の問題です。高校生か、もしかして中学生でも答えられるかも知れません。)

 

問14 DNA ウイルスはどれか。1つ選べ。

1 インフルエンザウイルス

2 ポリオウイルス

3 C型肝炎ウイルス

4 ヒトパピローマウイルス(HPV)

5 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

(個人的には、よっぽどそのウイルスの性質や抗ウイルス薬の作用機序と関係のある場合以外は、ウイルス核酸がDNAかRNAかを問う必要はないと思うのですが、こういう問題もよくででます。まあ、そういう分類があるというのを知っておいてねということでしょうか。HIVとインフルエンザウイルスがRNAウイルスであることは、ウイルスの性質とも関係が深いので必ず知っておいて欲しいですけどね。)

 

問15 貪食能を有し、単球に由来する細胞はどれか。1つ選べ。

1 B細胞

2 ヘルパーT細胞

3 形質細胞

4 マクロファージ

5 肥満細胞

 (免疫担当細胞に関するごく基本的な知識ですね)

 

問19 最近10年間(平成17年以降)で、我が国において、発生患者数が最も多い食中毒の病因物質はどれか。1つ選べ。

1 黄色ブドウ球菌

2 カンピロバクター・ジェジュニ/コリ

3 サルモネラ属菌

4 腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生)

5 ノロウイルス

(これは医療従事者の一般知識として知っておきたいことですね)

 

問40 抗ウイルス薬ラミブジンが阻害する酵素はどれか。1つ選べ。

1 ノイラミニダーゼ

2 インテグラーゼ

3 逆転写酵素

4 HIV プロテアーゼ

5 チミジンキナーゼ

(正解以外の選択肢についても、ピンと来て欲しいところです)

 

問48 陽イオン性界面活性剤に分類されるのはどれか。1つ選べ。

1 デオキシコール酸ナトリウム

2 ベンゼトニウム塩化物

3 ホスファチジルコリン(レシチン

4 ラウリル硫酸ナトリウム

5 ラウロマクロゴール

 (消毒薬の構造や性質が思い浮かぶでしょうか。塩をつくる相手のイオンからも、だいたい予測がつきそうです・・)

 

問83 院内感染の原因菌の1つであるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA)の主要な感染経路はどれか。1つ選べ。

1 空気感染

2 飛沫感染

3 接触感染

4 昆虫媒介感染

5 垂直感染

(感染経路に関する基本的な知識ですね)

 

問86 熱に不安定な薬物の水溶液を滅菌するのに最も適した方法はどれか。1つ選べ。

1 高圧蒸気滅菌

2 乾熱滅菌

3 ろ過滅菌

4 高周波滅菌

5 ガス滅菌

(基本的です。他の国家試験にもでそうですね。)

 

問90 大雨の翌日、床上浸水の被害にあった男性が、汚水に浸かった室内を消毒する

目的で薬局を訪れた。この男性に提案する消毒剤として最も適切なのはどれか。

1つ選べ。

1 グルタラール液

2 ベンザルコニウム塩化物液

3 ポピドンヨード液

4 アクリノール液

5 オキシドール

(薬剤師ならではといえる面白い問題です。必要とされる消毒薬の性質・使ってはいけない薬剤の消去法から考えられそうです。単純な知識でなく、考える力が試される良問です。個人的には、各国家試験でこのような考える問題が増えて欲しいし、そうなるのではないかと予想します。それにあわせて学生も、単なる暗記の勉強ではなく、内容を理解する勉強が求められ、試されます。)

シチュエーションに応じた消毒薬の選び方・使い方

シチュエーションに応じた消毒薬の選び方・使い方

 

 

このブログをはじめた理由

まだはじめたばかりで、ちゃんと長続きするかどうかもわかりませんが、このブログをはじめた理由を書いておきます。

 

私は、とある医療系の国家試験を受ける学生の教育に関わっています。専門分野は、生物学や微生物学関係です。その分野の科目の指導や、国家試験対策の指導なんかをするわけですが、指導にあたってはやはり最終目標である国家試験の過去問を分析、参考にして、指導に役立てます。具体的には、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、歯科衛生士などの国家試験です。

 

生物、微生物などの科目は基礎的な科目で、各国家試験に共通して出題されます。そして、各国家試験の過去問の中に、他の国家試験に出題されてもおかしくないような良い問題がたくさんあります。世の中の流れに沿った時事問題も、共通して出題される可能性があります。もしかして、出題委員の先生方も他の国家試験の問題を参考にして問題を作成しているかもしれません。

 

そこで、各国家試験の問題と出題傾向をまとめれて公開すれば、受験生にも役立つのではないかと考え、ブログを作ってみました。また、各国家試験を横断して、出題されたトピック別に問題を集めて解説することも計画しています。更新頻度はあまり高くないと思いますが、使っていただけると幸いです。

2015年 看護師国家試験問題から

2015年の看護師国家試験(第104回)から、生物・微生物・免疫学分野の問題をみてみましょう。

 

 看護師国家試験の問題をじっくりみたのは初めてだったのですが、このブログでとりあげる他の医療系国家試験と比べると、生物・微生物分野の問題は非常に基本的で易しい問題が多いという印象を受けました。(午前82のやや専門的な白血球減少症の問題以外)。

 生物・微生物・免疫系の問題の難易度は、私のぱっと見た印象では、、

”医師>薬剤師=歯科医師>歯科衛生士>看護師”

って感じでしょうか??全ての問題をよく見ていないので違うかもしれませんが、なんとなくこんな印象です。薬剤師は歯科医師は同等かやや難しく、問題数も多いようです。ただし、問題の難易度と、合格のしやすさはまた別でしょう。歯科医師国家試験の合格率は、ずいぶん低いですからね・・。

 

<ポイント>

  •  消毒薬の希釈の問題(午後90)。これは他の国試でも出てもおかしくないし、出して欲しいですね。医療系大学生でもちゃんと計算できない人が結構います。
  • ここで出題されている基本的な生命科学の問題は、他の国家試験受験生も全問正解しなければいけないでしょう。(午前76と午後82を除く)

 

午前

10. 免疫機能に関与する細胞はどれか。

1.血小板

2.白血球

3.網赤血球

4.成熟赤血球

 

21. 生理食塩水の塩化ナトリウム濃度はどれか。

1. 0.9 %

2. 5 %

3. 9 %

4.15 %

 

76. 平成 24 年(2012 年)の国連エイズ合同計画〈UNAIDS〉の報告において、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉陽性者が最も多い地域はどれか。

1.東アジア

2.北アメリカ

3.オセアニア

4.サハラ以南のアフリカ

 

77. タンパク合成が行われる細胞内小器官はどれか。

1.核

2.リボソーム

3.リソソーム

4.ミトコンドリア

5.Golgi〈ゴルジ〉装置

 

午後

3. 食中毒の原因となるのはどれか。

1.セラチア

2.カンジダ

3.サルモネラ

4.クラミジア

 

27. 蛋白質で正しいのはどれか。

1.アミノ酸で構成される。

2.唾液により分解される。

3.摂取するとそのままの形で体内に吸収される。

4.生体を構成する成分で最も多くの重量を占める。

 

31. ヒト免疫不全ウイルス〈HIV感染症で正しいのはどれか。

1.経皮感染する。

2.無症候期がある。

3.DNA ウイルスによる。

4.血液中の B 細胞に感染する

 

82. 白血球減少症で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.好塩基球数は増加する。

2.EB ウイルス感染によって起こる。

3.白血球数が 3,000/nL 以下をいう。

4.好中球減少症では細菌に感染しやすくなる。

5.無顆粒球症は単球がなくなった病態をい

 

90. 5 %のクロルヘキシジングルコン酸塩を用いて 0.2 %希釈液 2,000 mL をつくる

のに必要な薬液量を求めよ。ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第 1 位を四捨五入すること。

解答:①②mL

<計算問題:2桁の数字をマークシートで答える問題です>

 

kogumakita.hatenablog.jp

 

2016年 歯科衛生士国家試験から

kogumakita.hatenablog.jp

  ↓ここからが、本題↓

 

2016年の歯科衛生士国家試験問題(第25回)の中から、微生物学・免疫学関係の問題を抜き出しました。

<ポイント >

  • ここ数年頻出の低温プラズマ滅菌法がまた出題
  • (院内)感染対策に関する問題の出題(B型肝炎感染者の印象の消毒、ノロウイルス感染者の嘔吐物処理)
  • 消毒薬の希釈率の問題

 

 

(午前7)ペリクルで正しいのはどれか。

  1. 上皮細胞からなる。
  2. 厚さは10~20μmである。
  3. 細菌や有機物質を吸着しやすい。
  4. 酸に対する抵抗性を低下させる。

 

(午前11)球菌はどれか

  1. Streptococcus mutans
  2. Fusobacterium nucleatum
  3. Porpyromonas gingivalis
  4. Aggregatibacter actinomycetemcomitans

 

(午前12)

免疫グロブリンの図を示す。この免疫グロブリンの特徴はどれか。

 f:id:kogumakita:20160609154418p:plain

  1. 胎盤通過性がある。
  2. 抗原感作後に最も早く出現する。
  3. 免疫グロブリンの中で血清中に最も多い。
  4. アナフィラキシーショック型アレルギーの原因となる。

 

(午前13)プリオンの本体はどれか

  1. DNA
  2. RNA
  3. 糖質
  4. タンパク質

 

(午前17)歯質変色の副作用がある薬物はどれか

  1. アモキシシリン
  2. セファレキシン
  3. テトラサイクリン
  4. クラリスロマイシン

 

(午前17)菌体外多糖類を合成するStreptococcus mutans酵素はどれか。

  1. アミラーゼ
  2. トリプシン
  3. ペルオキシダーゼ
  4. グルコシルトランスフェラーゼ

 

(午前26)新興感染症はどれか。2つ選べ。

  1. 結核
  2. マラリア
  3. エボラ出血熱
  4. 重症急性呼吸器症候群SARS

 

(午前36)HBe抗原陽性患者の印象採得物の消毒に有効なのはどれか。

  1. ポビドンヨード
  2. グルタールアルデヒド
  3. 塩化ベンザルコニウム
  4. 塩酸クロルヘキシジン

B型肝炎ウイルスHBVに有効な消毒薬はどれか?)

 

(午前97)ノロウイルス感染者の吐物の処理の手順を示す。

 ① 使い捨ての防護服を着用する。

 ② 吐物をペーパータオルで拭き取る。

 ③ 拭き取った吐物は便器に流す。

 ④ 拭き取った後の床は次亜塩素酸ナトリウムで消毒する。

適切でないのはどれか。

  1. ① b. ② c. ③ d. ④

 

(午前101)ABO式血液型の説明で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. A型の赤血球にはB抗原がある。
  2. B型の血清中には抗B抗体がある。
  3. O型の血清中には抗A抗体がある。
  4. AB型の赤血球にはA抗原がある。

 

(午後11)レトロウイルスはどれか。

  1. B型肝炎
  2. ムンプスウイルス
  3. インフルエンザウイルス
  4. ヒトT細胞白血病ウイルス

(レトロウイルス科のウイルスと言えば、HIVが有名ですが、もうひとつはどれでしょうか?)

 

(午後12)女性ホルモンによって発育促進がみられるのはどれか。

  1. Prevotella intermedia
  2. Actinomyces naeslundii
  3. Tannerella forsythensis <forsythia>
  4. Aggregatibacter actinomycetemcomitans

 

(午後18)う蝕の発生原因となる甘味料はどれか。

  1. スクラロース
  2. フルクトース
  3. アスパルテーム
  4. エリスリトール

 

(午後24)水道法の水質基準において検出されないことと規定されているのはどれか。(公衆衛生)

  1. 水銀
  2. 大腸菌
  3. フッ素
  4. ホルムアルデヒド

 

(午後24)予防接種において生ワクチンを用いるのはどれか。

  1. 麻疹
  2. 破傷風
  3. 百日咳
  4. インフルエンザ

(MRワクチンというのがあります。)

 

(午後36)低温プラズマ滅菌で正しいのはどれか。

  1. 環境汚染がある。
  2. 使用ガスに毒性がある。
  3. 滅菌温度は70℃である。
  4. 器材は滅菌直後に使用できる。

 

(午後72)口腔内の付着物・沈着物と構成物の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 舌苔 – 剥離上皮
  2. プラーク – 口腔細菌
  3. ペリクル – 口腔細菌の産生物
  4. ステイン – 唾液由来の糖タンパク質

(午後97)床やスピットンに散った血液の消毒に6%次亜塩素酸ナトリウム液を希釈して0.5%液を600mL作ることにした。 

 6%次亜塩素酸ナトリウム液は何mL必要か。

  1. 25 mL
  2. 50 mL
  3. 75 mL
  4. 100 mL

 (まず、6%を0.5%に希釈するには、何倍に希釈するか?600mlに、その希釈率をかける(割る)と、答えがでます。)

 

 詳しい解説は、、

kogumakita.hatenablog.jp

 

徹底分析! 年度別歯科衛生士国家試験問題集2017年版

徹底分析! 年度別歯科衛生士国家試験問題集2017年版

  • 作者: 歯科衛生士国試問題研究会
  • 出版社/メーカー: 医歯薬出版
  • 発売日: 2016/06/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 
徹底分析! 年度別 歯科衛生士国家試験問題集 2016年版

徹底分析! 年度別 歯科衛生士国家試験問題集 2016年版

  • 作者: 歯科衛生士国試問題研究会
  • 出版社/メーカー: 医歯薬出版
  • 発売日: 2015/06/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る